上司と噛み合わない。何を言っても伝わらない気がする。そんなとき、多くの人はまず「我慢」を選びます。私もそうでした。すんなり言い返せる性格では、まったくありません。この記事では、言い返せるようになるまでに何度も飲み込んだ言葉と、そこから抜け出すために実際にやったことを書きます。
指示はあいまいなのに、指摘だけは細かい人だった
会社員時代、16歳上の上司とどうしてもソリが合いませんでした。指示はあいまいなのに指摘は細かい。うまくいけば自分の手柄、うまくいかなければ部下のせい。自分で調べもしないし、決めもしない。そんな人でした。
不満はありましたが、最初のうちは飲み込んでいました。「角が立ったら面倒だ」「自分が我慢すれば済む話だ」。そう考えて、言いたいことをその都度しまい込んでいたのです。
言い返す前に、何度も飲み込んだ言葉があった
正直に言うと、ある朝いきなり強気になれたわけではありません。その前の数週間、頭の中では何度も言い返していました。通勤中に「今度こう言われたら、こう返そう」と考えては、いざその場面になると結局黙る。その繰り返しでした。
言えなかった理由ははっきりしています。「面倒な部下だと思われたくない」という気持ちが、いつも先に立っていたからです。指摘されるたびに、心の中では反論しながら、口では「すみません」とだけ言う。そのギャップが積み重なって、自分の中に小さな重さとして残っていきました。
転職を決めたことで、状況が変わりました。「この会社に居続けるわけではない」という一点が、飲み込んでいた言葉を出す後押しになったのです。そして、朝からこんなやりとりがありました。
「そういえば、お願いしていたあの作業どうなっている?」
「あなたの確認待ちですよ。確認依頼のメール、まだ見ていないんですか?」
「出た出た。前から言ってるけど、メールは一方的なコミュニケーションで、相手が気づいていないなら何もしてないのと一緒だぞ?」
正直、耳を疑いました。自分がメールを読んでいなかったことには触れずに、責任だけをこちらへ寄せてくる。そのやり方が気に入りませんでした。
「今週はあなたが入れた飛び込み作業をやっていたのは知っていますよね?お受けする前に、その点も確認しましたよね?」
「はぁ。ちょっと担当者意識が低いんじゃないのか?」
想像はしていましたが、やっぱりこう来るか、と思いました。数週間分の飲み込んだ言葉が、ここで初めてまとまって出てきた感覚でした。
「私はあなたの責任者意識が低いと思います。遅延が拡大しても何の手も打ってこなかったから、こうなっているんですよね。部下を蹴っ飛ばしてやれやれと言うだけが、リーダーの仕事じゃないでしょう」
黙っている人ほど、当たりが強くなっていった
このやりとりのあと、自分の中に残ったのは後悔ではなく、小さな発見でした。
同じ上司の下で、黙って我慢するタイプの同僚がいました。反論せず、嵐が過ぎるのをじっと待つ人です。ところが、その人への当たりはどんどん強くなっていきました。言い返さない人は、やり返してこないという安心感の中で、扱いが雑になっていく。逆に、多少ぶつかっても意見を返す自分の方が、まだ消耗が少なかったのです。
我慢には限界があります。「これだけ我慢しているのに」という気持ちは、どこかで必ず爆発します。爆発する前に、少しずつ言葉にして出しておく方が、結果的に自分を守ることになります。そう気づいたのは、我慢し続けた同僚の体調が目に見えて崩れていくのを、そばで見ていたからでした。
言葉にできるようになるまでにやったこと
「我慢をやめて言葉にする」と言うのは簡単ですが、性格を変える必要はありません。実際にやったのは、次のような小さなことの積み重ねでした。
まず、頭の中だけで済ませないこと。言いたいことをメモに書き出すと、感情がそのまま飛び出すのではなく、事実だけが整理された形で残ります。次に、「多少角が立ってもいい」と自分に許可を出すこと。丸く収めることを最優先にしていた間は、結局どこにも本音を出せませんでした。
そしてもうひとつ、一人で抱え込まなかったことです。当時、リベシティの転職チャットで、同じように言いたいことを飲み込みがちな人たちとやりとりしていました。会社の中ではストレートに言えないことも、社外のつながりだと不思議と言葉にできる。転職を考えていることも、そこでは隠さず前向きに話せました。価値観の近い人に先に話してみると、「それは言っていい」と後押ししてもらえることが多く、それだけで次の一歩が軽くなったのだと思います。
小さく伝える練習を重ねること。いきなり大きな主張をするのではなく、まずは事実を一つだけ伝えてみる。それができたら、また次の場面で一つ増やす。あの朝の言い返しも、数週間分の小さな練習の延長線上にあったのだと、今なら分かります。
我慢するモードから、伝えるモードへ切り替える
「言いたいことは言わなきゃ伝わらない」というのは、当たり前のようでいて、渦中にいると忘れてしまう感覚です。相手は超能力者ではありません。飲み込んだ言葉は、相手に届かないまま、自分の中にだけ溜まっていきます。
ここで大事なのは、我慢するかどうかは性格の問題ではなく、どちらのモードを選ぶかという問題だということです。感情のままに文句をぶつけるのではなく、「もっとこうしてもらえたら助かるのに」という形に変えて、建設的に意見を返す。このモードに意図的に切り替える練習は、性格を変えるよりずっと現実的です。
この切り替えの手前に、もうひとつ挟んでいるのが「自分を甘やかすモード」です。自分にできていないことがあるのは分かっている。それでも、あえて「もっとこうだったら、自分だってやれるのに」と考える時間を意図的に作ります。単なる責任転嫁と言われればその通りですが、それでかまいません。「どうしたらもっとやれるか」という前向きな問いに変わった瞬間、頭は勝手に答えを探し始めます。自分を責めるところから始めると、そこで止まってしまう。甘やかすところから始めると、その先の一歩が見えてくるのです。
そしてもうひとつ、あの経験で大きかったのが「逃げ道」の存在でした。愚痴を言い合える仲間がいたこと、そして退職が決まっていて「この人ともうすぐ離れられる」と思えたこと。この二つのおかげで、同じ状況でも心の負担はかなり軽くなりました。
そもそも、わかりあえない人もいる
どれだけ歩み寄ろうとしても、相手側にその気配がまったくない。そういう相手も、現実にはいます。時間と労力をかけても報われないと感じたら、早めに見切りをつけて、距離を取っていい。これは冷たさではなく、自分を守るための判断です。
転職を決めた理由はいくつかありましたが、あの上司との関係は、その中でも自分にとって譲れない一つでした。全部が全部、彼のせいだったとは思いません。それでも「ここだけはどうしても合わない」というポイントがはっきりしていたことが、転職という決断を後押ししたのは事実です。合わない相手にぶつかった経験は、無駄になるどころか、自分がどんな伝え方なら消耗せずにいられるかを教えてくれる材料になりました。
もし今、誰かとの関係で「言いたいことを飲み込んでいるな」と感じているなら、いきなり言い返せなくて大丈夫です。まずはメモに書き出すところから、価値観の近い人に話してみるところから。それだけで、次にどう動けばいいかが少しずつ見えてきます。
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まずは雑談から(リベシティ会員の方はこちら)→ https://skill.libecity.com/services/551
チャメ太郎/フリーライフ合同会社代表


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